結婚式はベルセバで

今でも心に残る音楽。いつの日か迎えたい結婚式では何を流そうか、その選択のために書いています。

Oasis "You've Got the Heart of a Star"

たしか、"Songbird"のB 面に入っていたはずだ。YouTubeでこの曲のビデオに出会い、私はSongbirdのシングルを買った。国内版には収録されておらず、UK版を手に入れたことを覚えている。

私がYouTubeで見たあのビデオはオフィシャルのものだったのだろうか。シングルB面というこの曲の立ち位置を考えれば、誰か個人が作ったもののような気がする。

そのビデオは白を基調とした柔らかい映像で、取り壊される前のウェンブリースタジアムでの彼らのライブが収められていた。ステージ上のバンドというよりは、スタジアムに向かう観客たちの映像やウェンブリースタジアムが刻んできた歴史を示す描写が印象に残っている。Let There Be Loveのビデオをより明るく、柔らかくしたような印象だ。YouTubeを探せばまだ見られるかもしれない。

そのビデオとこの曲の持つ多幸感と言ったら、なんと表現すれば良いのだろう。この曲は、ノエル・ギャラガーという素晴らしいミュージシャンの最高傑作の一つだと思う。

この曲にはまっていた頃、私は高校生で、窓際の席に座っていた。季節は冬で、桜の木々に葉はなく、寒さから護られた教室は、何となく切なかった。あの切なさは何だったのだろう。今になってみれば、高校生活に思い入れはないのに。難しい数学や物理など、黒板を眺めていることすら苦痛な授業中、私の頭の中にはずっとこの曲が流れていたものだった。そして、それは外の世界と不思議とマッチしていた。どこにでもある、ありふれた、見慣れた冬の風景。時折通りかかる人たちは、スーパーのレジ袋を提げた主婦や高齢者ばかりだった。そんな光景が、幸せの象徴のように感じたのだ。大きな袋を提げていれば、家族の存在を思い浮かべたし、小さな袋なら、文字通りのささやかで慎ましい幸せがイメージされた。この曲は、ひねくれた高校生に無批判な眼差しを与える、そんな力を持っているのだ。

もちろん、この曲の魔力だって長くは続かなかった。ただ、17歳というあの時期に優しい気持ちになれたことはとても幸運なことだったと思う。優しさを自分への甘さに転嫁して、人生が上手くいかなくなった気もするけれど、無駄ではなかったのだと今になって感じる。今年も冬が近づいているからだろうか。